緑花ガイド

ユキヤナギ

 早春3~4月。真っ白な小さな5弁の花がしなやかな小枝を覆って、雪におおわれたヤナギの枝を連想させるユキヤナギは、古くから人々に親しまれてきた庶民的な花です。古く平安時代から人々に愛されていたようで、コゴメバナ(小米花)と呼ばれていました。淡緑色の新緑もよく、また園芸品種の中には秋に美しく紅葉するものがあります。
 中国、およびわが国の関東以南の本州、四国、九州の川岸などの岩上に自生しています。暖地に育つ植物ですが、耐寒性も強く、北海道の札幌くらいまでは、植栽することができます。東北地方では、列に植え、低い生垣にして多く植えられています。
 樹勢は強く、日当たりよく、排水と保水のよい場所なら、乾燥した所でも湿り気のある所でも、土性も選ばずよく育ちます。ただし、半日陰では、育つことは育ちますが、花つきが悪くなります。
 ユキヤナギは、庭園や公園などに広く植えられ、また切花としての需要も多く、促成栽培も行われています。
 コデマリ、シジミバナ、シモツケなどは、同じシモツケ属の仲間です。

園芸品種

 自生種のほかに、いくつかの園芸品種があります。

早生品種

 在来系で、12月から促成可能な極早生種で、生長力はあまり強くなく、枝は細くて垂れやすい。

晩生品種

 在来系で、成長力が強く、枝は太く長く伸びる。毎年切り枝することができる。春先に促成に用いられる。花は大きく、美しい。

鎌田早生品種

 営利栽培に用いられるもので、成長力の強い、大輪、多花性の高性品種。

フジノピンキー

 ユキヤナギの紅花品種。蕾のときに紅色が濃いが、開花すると白くなる。花を楽しむほか、寄せ植えや根締めに適している。

植え付け

 酷寒、酷暑の候を除けばいつでもよいが、葉の開く前の2~3月が最適期です。日当たり、排水がよく、有機質に富んだ肥沃土がよい。植え穴に堆肥や腐葉土をすき込み、高植えにします。

剪定

 花芽は、秋に気温が20℃以下になるころ、充実した枝の腋芽の中に分化し、冬までにほぼ完成します。そして、冬の低温を3~4週間うけると開花可能になります。この性質を利用して、12月下旬以後に温室で開花させたものが、促成ユキヤナギとして市場に切花で出荷されます。
 成長が早く、萌芽力と復元性は強いが、ゆるやかに垂れ下がった枝いっぱいに雪が積もったように花をつけた姿が美しいので、空間を十分にとって自由に伸ばした姿が一番きれいです。
 あまり強い剪定はせず、開花後に枝をすかせて、地際から新しい枝を出させます。4~5年ごとには古い枝を根元から切り取って新しい枝に更新します。
 樹形を小さく作りたいときは、花後に根元から10cmほど残して切り、新梢を出させます。さらにスコップで根を切っておくと、小枝が密生せず、ほどよく湾曲して美しい樹形になります。
 剪定は、花芽が形成される夏以降は行いません。

殖やし方

 普通は、株分けや挿し木で殖やします。4~5月に、まだ木質化していない緑枝を15cm前後に切って密閉挿しすると、3~4週間で完全に発根した苗を作ることができます。この苗を移植して肥培すれば、秋にはりっぱな苗になります。株分けは、3月ころに掘り上げて分けます。

施肥

 1月~2月に、寒肥として、油カス,骨粉、鶏ふん、化成肥料などを1~2握り、株元に施します。開花直後に化成肥料などを与えると、丈夫な新枝が出て、翌年の花つきがよくなります。

病虫害

 枝が混んでくると風通しが悪くなり、アブラムシやカイガラムシ、うどんこ病が発生します。枝数を減らして通風をはかり、定期的に薬剤を散布します。枝枯れ病は、窒素肥料をやりすぎないようにすれば発生しにくくなります。

フジノピンキー   蕾のうちは紅色が濃い
花が開くと薄いピンクになる