緑花ガイド

ヤマブキ

 春の野山で〈山吹色〉といわれる鮮やかな黄色の花を咲かせる姿は、古くから日本人に愛されてきました。
 ヤマブキには、一重のほかに八重の花もあり、太田道灌の〈七重八重 花は咲けどもヤマブキの実のひとつだに なきぞ悲しき〉の歌は有名で、八重の花は実が結実することはごく稀で、〈実がない〉→〈蓑がない〉にかけています。そのほか万葉集にも多くの歌が詠まれています。
 日本と中国に分布する落葉低木で、高さ1~2mになり、枝は緑色、花は枝の先端に単生し、黄色の花弁は5枚で平開して咲きます。
 庭木として単植、群植して楽しめ、また、灯篭や庭石の前づけ、大きな木の根締め、池の端に植えるとよく調和して、風情があり、多く使われています。

 ヤマブキには、品種として花が八重咲きで果実をつけないヤエヤマブキ、変種として細い花弁が6~8枚重なってキクのような外観のキクザキヤマブキ、黄色が白っぽくなった不完全な白花のシロバナヤマブキ、葉に白い斑の入ったフイリヤマブキ、小枝に緑色と黄色の条線が入るキスジヤマブキがあります。

ヤマブキ
ヤマブキ
黄色の5弁花の一重咲きで、
枝垂れるように株立ちする
ヤエヤマブキ
ヤエヤマブキ
八重咲きというよりも千重咲きで、
雄しべや雌しべまで花弁のようになる

植え付け

 日当たりがよすぎて乾燥した場所は嫌い、西日の当たらない腐植質の多い肥沃な所を好み、木陰や池のそばなど湿った状態が理想です。
 厳寒期を除く11~3月に、浅く幅広く植え穴を掘り、元肥として堆肥や腐葉土をたっぷり入れて、水もちをよくして植え付けます。植え付け後は、腐葉土やピートモスで株を覆い、乾燥を防ぎます。

整枝・剪定

 花芽は、新梢に夏ころにでき、翌年、そこから短枝を伸ばして開花します。
 若い枝が垂れ下がるように自然に伸びている様子が見所になるので、剪定で樹形をつくり込まないようにします。
 冬の間に枯れ枝や混み過ぎた枝をつけ根から切り取ります。地下茎を伸ばして殖えるので、地ぎわからよく枝が伸びてきます。4~5年以上の古い枝は、若い枝と更新する目的で、地ぎわから切り取ります。また、古株は5年に1回、花の終わった5月中旬に地ぎわから10~15cm残し、枝をすべて切り取って株を更新させます。

施肥

 寒肥として1月下旬から2月に、株の周囲に溝を掘り、堆肥や腐葉土を十分にすき込みます。

病虫害

 特に心配はありません。

殖やし方

 ヤマブキは株がよく発達するので、殖やす場合は、地ぎわを掘り、根のついた枝を3~4本で1株として、切り離して株分けをします。春に芽の出る前に株分けすると、繁殖は楽で、少ない株で宿根草のように株立ちとなり、地下茎状の茎でよく殖えます。
 また新梢を15cmほど切り取り、赤玉土か鹿沼土にさし木します。

シロヤマブキ
 ヤマブキに似ているところから名づけられており、名前がヤマブキの白花種であるシロバナヤマブキと混同されやすいですが、ヤマブキ属ではなく、シロヤマブキ属の植物で〈白いヤマブキ〉ではありません。
 ヤマブキは5弁ですが、シロヤマブキは4弁です。葉もヤマブキが互生するのに対し、シロヤマブキは対生で葉面に細かいシワがあります。
 シロヤマブキは、中国が原産の植物で、山東省や河南省などに分布し、標高800mくらいの山の疎林地帯の下に生えています。日本でも中国地方の瀬戸内海側に自生しています。花後、1花に4個ずつ、径7㎜ほどの楕円形の果実がつき、秋に葉が黄葉して落ちると、黒く光沢のある深い色合いで、見ごたえがあります
 樹勢は強く、日当たりのよい所から半日陰まで、よく生長します。
 繁殖は、黒熟した種子を取りまきにするか、冷暗所に貯蔵して翌年の3月中旬に播くとよく発芽します。