緑花ガイド
ウメ
ウメの花は、早春の息吹とともに枯れ木に見えた木に一斉に花が咲くと、殺風景だった景色がいっきに華やぎます。
ウメは、中国の原産で、薬用の木として古くから日本に導入されていて、万葉集では花を楽しむ花木としてサクラよりも圧倒的に多く登場しています。花の美しさだけでなく、甘い香りも魅力的で、品種改良が盛んに行われたために花色、咲き方、枝の出方などバリエーションが豊富で、300を超える園芸品種が作られています。また、花を楽しむ「花ウメ」だけでなく、梅干や梅酒作りなどに用いるための「実ウメ」もあります。
系統
ウメは、多くの園芸品種の分類として、交配の系統により四つの系統に分けられています。
- 1 野梅系
中国から伝来した当時のウメの種子から生え、発達したものと思われ、原種に近く、丈夫で葉が割合小さく、枝も細かいため盆栽に適している。
白加賀、見驚、冬至、紅冬至、道知辺、八重寒紅 など - 2 紅梅系
枝を切って見た木部の髄が紅色の系統で、花は紅色のほかにも白色や覆輪のものもあります。
紅千鳥、関守、大盃、鹿児島紅、緋梅 など - 3 豊後系
ウメとアンズの中間の性質を持ち、枝が他の系統よりはるかに太く、小枝が少なく、葉が大きい。花の匂いも少ないが、果実が大きい。
豊後、楊貴妃、武蔵野、未開紅、大湊 など - 4 杏系
豊後系よりも枝、葉がやや細かく、他のウメと違って葉に毛がなく、ウメというよりアンズに近い。アンズとの交雑種といわれ、花の匂いもほとんどなく、花期は最も遅い。
記念梅、獅子頭、江南所無、緋の袴 など
植え付け
12月中旬から2月が適期。芽が吹く前に根が動き始めるので、植え付けが遅れると新しい根を傷めることになってしまいます。
日当たり、水はけの良い場所を選び、枝が大きく広がるので、スペースを広めにとって植えます。植え穴は大きめに掘り、元肥として堆肥や腐葉土を入れ、高植えにします。
苗木の地上部は半分から1/3程度に切り詰め、新梢を吹かせるようにします。
施肥
12月下旬から2月上旬と8月下旬から9月上旬の2回、油カスや粒状化成肥料などを木の生長に合わせて施します。窒素分が多すぎると枝ばかりが伸びて、花つきが悪くなります。
病害虫
アブラムシ、ケムシ類、コスカシバ、黒星病などがよく見られます。葉の茂っている4~6月に殺菌、殺虫剤を定期的に散布して防除します。冬に発生しやすいカイガラムシには、12~2月に石灰硫黄合剤を3~4回散布します。
剪定
俗に「サクラ切るばか、ウメ切らぬばか」といわれるとおり、ウメは剪定で花のつく枝をふやし、樹形を作り上げていく木です。
7月に入ると充実した短枝の葉腋に花芽がたくさんつき、翌年そこで開花します。長く伸びた枝には、ほとんど花芽はつきません。また、花芽のつく短枝は3年ほど開花したら、花芽がつかなくなります。
花芽のない長く伸びた枝は、12月下旬から1月に、半分くらいの長さに切り詰めて、短枝を出させます。短くしすぎると、さらに強い枝が伸びて、短枝ができないので注意します。
鉢植えの花ウメは、花が終わったらすぐに剪定を行えば、その年に短枝ができるので、翌年から開花が増えます。
庭植えの実ウメは、花後に剪定すると、せっかく結実したところを切り落としてしまう可能性があるので、剪定は冬の間に行います。切り詰めるときは、外芽の上で切り、枝が外側に伸びるようにすると樹形が良くなります。