緑花ガイド
サザンカ
落ち葉が散り、木枯らしの吹き始める晩秋の季節に、ようやく固い蕾を開き始めるサザンカは、寂しくなった冬枯れの庭先に彩りを添えてくれる数少ない花木です。
野生のサザンカは、一重の白花ですが、今日栽培されている園芸品種は、白花のほかに紅色や桃色、あるいは花弁の先端に紅色のぼかしが入るものなども多く、花径も大輪で広弁のもの、また花弁数多い八重咲きの品種などもあります。
サザンカの系統と品種
300品種ほどにもなるサザンカの園芸品種は、開花期や花や葉の形態の違い、樹性などから、いくつかの系統に分けられます。
サザンカ群
もっとも普通に見られるサザンカで、開花期は早く10月から12月に開花します。花色は白、桃、紅、弁先の紅色ぼかしなどがあります。花形は、野生種に似た一重か半八重で花弁はばらばらに散ります。樹形は立性で、枝が上方に向かって伸びます。
東雲、鳴海潟、丁字車、大空、爪折笠 など
カンツバキ群
盆栽に使われる“獅子頭”(関東では寒椿と呼ばれる)がもとになって生まれた品種。開花期はやや遅く11月から2月にかけて咲きます。雄しべの多くが花弁に変わり、八重や千重、獅子咲きなどにぎやかな花形の品種が多く、樹形が立ち上がらずに横張り性になります。
獅子頭、富士の峰、乙女、昭和の栄 など
ハルサザンカ群
サザンカとヤブツバキの雑種といわれ、開花期は遅く12月から3月にかけて咲くものが多く、花色は紅、桃、白、ぼかし白地に紅の縦絞りなどさまざまで、花形も一重から千重まで多くの変化があります。雄しべや花弁の基部が比較的長く合生し、葉も厚いなどツバキとの中間的な特徴を持っています。樹形は立ち上がらず、小形に仕立てやすい品種が多くあります。
星飛龍、古金襴、銀龍、絞笑顔 など
植え付け
4~5月または8月下旬~10月に、有機質に富んだやや粘質の肥沃な場所を選びます。植え込む場所に堆肥などの有機質を十分にすき込み、小さい苗は根鉢の土を完全に落としてから植えつけます。その後、支柱を取り付け、十分に水を与えます。
整枝、剪定
自然樹形のままにしても、刈り込み仕立てにしてもよく、萌芽力が強いので、さまざまな樹形に刈り込めます。
剪定は、開花後から4月までに行い、それ以外の時期には伸びすぎた枝を間引く程度にします。梅雨時以降に刈り込むと、せっかく着いた花芽を落としてしまうことになるので、夏の刈り込みは最小限にとどめます。
施肥
2月に寒肥として堆肥を埋め込み、4月と6月、9月に油カスと化成肥料を混ぜたものを、1株に1~3握りくらい施します。
病虫害
病虫害は、ツバキとほとんど同じで、チャドクガは、1年に2回発生し、幼虫は4~5月と8~9月に現れます。頭が黄色で、胴は黄色と濃褐色のまだら色の毛虫が葉の縁に横一列に並んで、頭をそろえて葉の縁から食害を起こします。この毛虫は、毒針毛をもっていて、虫に触れたり、脱皮した抜け殻に触れると、激しいかゆみがあり発疹を生じます。幼虫が群生している葉を枝ごと切りとって、焼き殺すか土中に埋めます。発生が多いときは、毛虫用の殺虫剤を早めに散布します。
また、1~2月に石灰硫黄合剤を散布して、もち病を予防します。
利用法
1本だけ植えて庭木仕立てにしたり、立寒椿のように分枝性が強く刈り込みに強い系統の品種は、生垣や目隠しなどに仕立てます。
カンツバキの多くの品種は、刈り込んで樹形を低く保つことが出来るので、高木の根締めとして利用できます。
また、鉢植えや盆栽仕立てにすれば、ベランダやテラスなどでも育てることができます。