緑花ガイド

サクラ

 花といえば「サクラ」をさすほど、「サクラ」は日本の文化と風土に、最も深く関わってきた花木です。いわゆる「サクラ」はサクラ属の中でヤマザクラに似た花の美しい落葉樹の種類の総称で、日本から中国、ヒマラヤに約30種ほど野生するグループです。古くから日本人に親しまれた植物の一つで、10~15種の日本特産種があり、さらに非常に多くの園芸品種が作られています。一般に「サクラ」といえば、古くは主にヤマザクラをさし、明治以降ではソメイヨシノをさすことが多くなりました。
 春の陽光を浴びて山全体に咲き誇るヤマザクラの群生、1000年を超えてなお美しく咲くシダレザクラ、山里にひっそりと咲くソメイヨシノなど、サクラは、その品種、場所、季節によって、それぞれ趣があります。サクラ一つ一つの花はさほど美しくは見えませんが、木全体に一朝に咲き、たちまち散っていく風情が、日本人の心とマッチして、広く愛されています。
 サクラは、自生種が10種、自然交雑種が約20種、およびそれらの変種、品種が多数あり、さらにこれらを親とした園芸品種が約300種あります。種類と品種がたいへん多く、枝や根の広がり、樹高などもさまざまです。しかも、剪定は病気の原因となりやすいので、枝を切って小さく育てることは困難です。移植もかなりむずかしいので、植える前の品種選びと植え場所は十分検討する必要があります。
 庭木には、マメザクラとその交雑種や、コヒガンザクラ、カンヒザクラ系などのように大きくならないものを選びます。エドヒガン系やオオシマザクラ、さらにその2種の交雑種といわれるソメイヨシノなどは大きく枝を広げ、樹高も高くなるので、狭い場所には適しません。

ソメイヨシノ
ヤエベニシダレ

サクラ類の園芸品種

 サクラ類の園芸品種群は、オオシマザクラを主とし、ほかにヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、エドヒガンザクラなどから育成されたものや、突然変異種およびそれらの交雑によってできた雑種など、多くの園芸品種があります。一般にこれらを「サトザクラ」( 里桜) と言っています。なかでもよく知られていて、人気が高いのは花の大きなオオシマザクラ系の品種です。

庭植えに適したサクラ

カンヒザクラ・・・
2~3月に葉に先立って2~3個の花を下垂し、半開状に開く。暗紅紫色か桃紅色でガク筒も同色なので、よく目立ち美しい。
コヒガンザクラ・・
エドヒガンとマメザクラの自然交雑種で、3月末ころ、径2~3cmの淡紅色の花を開く。
マメザクラ・・・・
別名ハコネザクラ。箱根地方の山地や丘陵に多い落葉低木。3月下旬に葉より早く一重の淡紅色の花を開く。花弁が純白で、ガクや若葉が緑色のものをリョクガクザクラといって区別している。
ヤエベニシダレ・・
エドヒガン系。枝がすだれのように下垂する。花は八重の紅色。花が一重のものをベニシダレという。
旭山・・・・・・・
サトザクラ系。樹高2~3mの落葉小高木。4月上旬に一重の淡紅色の花を開く。
天の川・・・・・・
サトザクラ系。樹形が箒状に直立する。4月中旬に八重の淡紅色の花を開く。

植え付け

 時期は秋の落葉後から、翌年新芽が伸び始めるまで行えます。日当たりと水はけのよい肥沃な場所に、大きな植え穴を掘り、堆肥などをよく混ぜ合わせ、高植えにします。接ぎ木してある苗は、品種がわかっていて、接ぎ口がきれいにふさがっているものを選びます。接ぎ木苗は、植えつける前に、必ず接ぎ木箇所のテープを取っておきます。植え付け後、枝を折らないように気をつけて、支柱を立てます。
 植え付ける時は、近い将来に隣の木と枝が接することのないように、植栽距離や間隔を十分にとることが必要です。

剪定

 放任しておいても、よい樹形を作るので、剪定はあまりしません。サクラは切り口の木質部が腐りやすく、枯死することもあります。なるべく太枝を切らないこと、太枝を切るときは必ず枝元から切ること、切り口には保護剤を塗ることを守れば、剪定することができます。株元からでるヒコバエやふところ枝やからみ枝など樹形を乱すような枝は切り落とします。枝がこまかく密生するてんぐす病にかかった枝も切り落とします。切り口には、腐敗菌に侵されないように、保護剤を塗っておきます。

施肥

 1~2月に根元の周りに、堆肥、腐葉土、鶏ふんなどをすき込みます。

病虫害

 アメリカシロヒトリは、白長毛の幼虫が群生して葉を食い荒らします。オビカレハの幼虫は、春早く、木の股や小枝の先に巣を作り、多数の幼虫が群生して葉を食い荒らします。うどんこ病も出やすいので、成長期には定期的に殺菌、殺虫剤を散布します。てんぐす病は、ソメイヨシノに多く発生し、小枝が異常に密集し、鳥の巣のようになる病気で、薬剤では防除できないので、病気の出ている枝ごと切って、切り口に殺菌力のある保護剤を塗り、切り落とした枝は焼却処分します。枝や幹に灰白色の斑点を生じるこうやく病は、患部を削り取り、石灰硫黄合剤を塗っておきます。

カンヒザクラ
関山