緑花ガイド

パフィオペディラム

 カトレアやコチョウランのように華やかなランと違って、パフィオペディラムは、ランのなかでは、あまりなじみがないかもしれません。
 しかし、栽培はいたって簡単で、一年中室内の窓辺でも栽培でき、植え替えさえしっかり行えば、手間をかけなくても元気に育ちます。
 外国ではこの花をレディース・スリッパというように、花を見てまず目につくのが、花の下半分に付いている袋状の唇弁(リップ)で、よく食虫植物と間違えられます。食虫植物のように虫を捕らえることは一緒ですが、虫を食べているわけではありません。虫を袋の中に誘い込み、受粉を助けてもらっている一風変わったランです。

 原産地は、ボルネオ、ニューギニア、スマトラ、セレベスあたりの熱帯圏およびインド北部、タイ北部などの亜熱帯圏で、ほとんどの種類は直接地面に根を張っており、中には石灰岩土壌を好んで自生しているものもあります。
 株の形は、常緑性で、バルブと呼ばれる肥大した茎を持たず、左右に広がる葉の中央から花茎を出し、その頂部に一輪の花をつけます。中には5輪以上の花をつける系統もあります。 根は、他のランに比べると数は少なく、根毛があり、あまり分岐しません。
 毎年、春から秋にかけて新芽がよく伸び、秋には生長が止まって花芽が出てきます。その頃になると、来年伸びる新芽が親株の根元に出来て、冬の間は成長を休止し、春になってから急に伸びる性質があります。
 開花期は11~3月ころまでがほとんどで、花は派手ではなく、全体として渋みが強く、袋状になっている唇弁には艶があり、他のランにはない特徴になっています。

 整形タイプの交配種 黄色系、茶色系、赤色系、白色系などいろいろな花色があります

栽培のポイント

☆ 水やり
 地面に直接根を張って生育している植物ですから、水の与え方はカトレアなどのようにバルブを持ち、乾燥を好むグループとは、全く異なるものです。
 水ゴケの表面が常に湿っているような水やりが理想的ですが、常に湿らせておくということは、実際には大変むずかしいので、水を与えるときは鉢内に十分に水分が行き渡るようにし、次に表面が乾いたら行うようにすればよく、コンポストに青苔の生えるような与え方はよくありません。
☆ 日光
 パフィオペディラムには、無地葉種と斑入り葉種の二つのタイプがあります。無地葉種は、比較的明るい場所を好み、斑入り葉種は、強い光線を当てると葉やけを起こしやすいので、無地葉種よりも弱光にし、強い光にあてるのは禁物です。
☆ 温度
 無地葉種は、冬期の夜間の最低温度は5~7℃くらいでも耐えられますが、斑入り葉種は、夜間の最低温度を12℃くらいに保つようにしなければなりません。順調に生育するためには、冬期の夜間の最低気温は、無地葉種で12~15℃、斑入り葉種では15~18℃くらいが必要です。
 冬期の日中の温度は、どちらの種でも25℃くらいまでにとどめ、これ以上の高温は、夜間との温度差がありすぎて順調な生育は望めませんから、できるだけ避けるようにします。
 夏期は、できるだけ涼しい場所に置き、株の消耗を少なくするようにします。
☆ 肥料
 カトレア系とは違い、生長を休止する時期がありませんから、肥料は年間を通して与えるようにします。
 新芽が1~2cm伸びたころから、水ゴケ植えで月2回、軽石植えで週1回、ハイポネックス1000倍液を与えます。
☆ 植え替え
 新芽が伸び始めて、その芽に新根がでていない時が最適期で、誤って新しい根を傷つけてしまう心配がありません。目安は花が終わってから1ヵ月後くらいがよいでしょう。株が大きくなって鉢いっぱいになったり、植え込み材料が古くなったら植え替えます。植え替えて3年目くらいになると、水ゴケがそうとう傷んでくるので、次の植え替えを行うタイミングです。植え込み材料は、今まで使われていたものと同じものを使うことが原則ですが、軽石やソフトセラミックなどを使うこともできます。植え替え後1ヵ月は、水やりの量を減らして、傷ついた根の回復を図ります。1回の水やり量を鉢の容量の四分の一程度にして何回も与えます。素焼き鉢の表面が乾いたら、水を与えるサインです。
☆ 病虫害
 害虫としては、カイガラムシと赤ダニが発生しますので、殺虫剤や殺ダニ剤を散布して防除します。
 病気は、根元を侵す軟腐病がいちばん恐ろしく、これにかかると株全体に広がり、やがて他の株へも伝染します。対策としては、侵された株は隔離し、ひどい株は根元から切り取ります。この病気の予防としては、葉の合わせめに水をためないようにすることが第一です。さび病は、葉の表と裏に茶色の斑点ができ、放っておくと次第に広がり、1株を枯らすこともあります。
 侵された葉は、すぐに切り取ります。普段から殺菌剤を散布して病気にかからないように注意します。
迫力のある多花性タイプ