緑花ガイド
庭で楽しむ丈夫なラン(シュンラン、エビネ)
ランの多くは鉢植えでの栽培が一般的ですが、種類が多く、さまざまな環境に生育するランのなかには、庭に植えて戸外で栽培できるものもあります。
生育に適した場所を選べば、あまり手間がかからず、自然に株がふえて、毎年たくさんの花を咲かせてくれます。
まわりの植物とマッチして咲く花の可憐さや美しさなど、鉢植えでは見られない趣や魅力があります。
シュンラン
春に他のランに先駆けて咲くので、この名があります。別名ホクロ、ハクリ、ジジババなどと呼ばれていますが、これはリップにある斑点をホクロに見立てたものです。
低山や林地の少し乾いた場所に生育する多年草で、暗緑色の線形で硬く丈夫な葉があり、春に花茎の先端に黄緑色の花が1つうつむいて咲きます。
花は黄緑色で、3枚のがく片(外花被)と3枚の花弁(内花被) があります。花弁はがく片よりやや短く、上部の2枚はがく片と同色で、下部にある唇形のリップは白色に紅紫色の斑点があり、他の弁より肉厚で縦にひだがあり、強く反り返って細かな突起があります。
古くから鉢植えや庭植えで栽培されています。野生種でも花の形やリップの斑点などは株ごとに変化が見られ、1茎2花咲きとなることもあります。
なかでも変化の著しいものは、東洋ランの中の日本春蘭として、園芸的に一つのグループで栽培されています。花では黄色、橙色、赤色、白色( 素芯) などがあり、葉では縞や斑入りなどがあります。
栽培は、春は午前中に日が当たり、夏は半日陰で風通しのよい落葉樹の下などがよく、多湿を嫌うので、腐葉土が多い排水のよい土に植えます。
エビネ
エビネは、花形や花色に幅広い変化があり人気があるランですが、園芸植物として本格的に栽培されるようになったのは比較的新しく、戦前までは山草の一種として栽培されていたにすぎませんでした。
日本各地の杉林や竹林などに自生している常緑の多年草です。
エビネとは「蝦根」、「海老根」のことで、地下浅く横に連結する球茎を、環節の入ったエビの腹部に見立てて呼ばれています。
エビネには、春咲き、夏咲き、秋咲きとあります。栽培されているのは、ほとんどが春咲き種です。
春咲きは、4~5月にいっせいに開花する種類で、一般にエビネとしてよく知られてるのは、ほとんどこのグループに属します。春の気温上昇につれて、冬至芽と呼ばれる太く硬い芽がほころびるころ、一本の花茎を伸ばし、1 0 ~ 3 0 輪の小花を穂状につけます。基本種には、一般にエビネといわれているジエビネをはじめ、キエビネ、キリシマエビネ、ニオイエビネ、サルメンエビネ、アマミエビネなどがあり、さらにこれらの間に生まれた自然交雑種が各地にあり、タカネエビネ、ヒゴエビネ、サツマエビネ、コウズエビネ、イシヅチエビネなどがあります。それぞれ微妙な色と花形の違いを観賞するマニアが増えています。最近は人口交配が盛んになり、品種が増えてきています。
エビネは、もともと杉林などの常緑樹の樹下に生えているので、日当たりのよい場所では生育することはできません。常に木漏れ日を受ける程度の状態が理想的です。都会のビルの谷間、建物と塀の間、住宅地の通路、中庭、裏庭など生育に適する場所はけっこう多くあります。
ジエビネ、キエビネ、ニオイエビネ、タカネエビネなど丈夫な種類は、庭園の樹下や中庭などの日陰に植えると、趣のある景観が作れます。庭木の根を避けて深く耕し、腐植質に富んだ排水のよい土に植え込みます。鉢植えの場合より大株になりやすく、管理が容易です。落葉はエビネの生育環境をよくするので、株際の落葉は放置しておきます。株の上の樹木が茂りすぎて日照が不足したら、木漏れ日があたる程度に剪定してやります。
夏咲きは、5月から7月に開花するキソエビネ、サクラジマエビネなどの初夏咲きと、7 月から9 月にかけて盛夏に咲き続けるナツエビネ、オナガエビネなどの夏咲きがあります。どの種類もたいへん希少種であり、栽培が極めて難しいので、一般の栽培には向いていません。