緑花ガイド

ムクゲ

ムクゲは、アオイ科フヨウ属(ハイビスカス属)に属する落葉性低木です。
 原産地は、中国で、中国名は「木槿」(ムーチン)といい、ここから転じて「ムクゲ」と呼ばれています。別名を「ハチス」とも言われています。
 「槿花一朝の夢」とは、一日だけの栄華をムクゲの花にたとえたもので、他のフヨウ属と同様に朝開いて夕方にはしぼむ一日花で、朝開暮落花の別名もあります。しかし、生長する枝の葉腋に次々とつぼみをつけるため、花期は長く、梅雨明けから9月まで、次々と咲き続けます。
 もともと日本に産するフヨウ属には、ハマボウ、モクフヨウ、ブッソウゲなどがありますが、いずれも暖地性の植物で、これらに比べるとムクゲが最も耐寒力があります。
 刈り込みに強く、よく分枝するので、生垣に多く使われています。また、丈夫で放任しておいてもまとまった樹形を作るので、庭の花木として植えられています。そのほか、最近では、矮化剤を使った鉢物も市販されています。

ムクゲ
ムクゲ
日の丸 (宗旦ムクゲ)
日の丸 (宗旦ムクゲ)

ムクゲの品種

古くから栽培され、親しまれてきた花木ですが、品種名がはっきりしたものは少なく、最も普通に見られるのは、紫紅色で5弁の一重咲きで、花弁の底部が濃紅色の、いわゆる底紅咲きといわれているものです。
 白色花弁で底部だけが鮮やかな紅色の一重咲きの「日の丸」だけが園芸品種名らしい名前がついています。茶人・宗旦が愛した花といわれ、別名・宗旦ムクゲといわれ、この品種だけが茶花として珍重されています。

植え付けと移植

乾燥や寒さに強く、丈夫で作りやすい植物で、日当たりさえよければなかば放任状態でも枯れることなく育ちます。土質を選ばず、また根が横走りしないので、庭を荒らすことがなく、どこでも植えられます。
 真冬を除いた落葉期ならいつでも植えられますが、秋よりも春に植えたほうが生長がよく、他の植物に比べて芽生えが遅いので、関東では3月から4月下旬ごろまで植えられます。

繁殖

さし木で簡単に殖やすことが出来るので、好きな品種があったら、枝を分けてもらってさし木するとよい。さし木の時期は、3~4月、6~8月、9月が適期です。春ざしは前年枝を、夏と秋ざしは今年の固まった枝を10~15cmの長さに切って、赤玉土などにさします。
 一重の矮性種と秋のさし木は、発根がわるいので、発根剤を使います。春ざしの苗は、その年に開花します。

整枝・剪定

ムクゲは、低木とはいうものの、生長が早く、また枝が上向きに伸びる性質があるので、庭木として放任しておくと、次第に下枝が上がってしまいます。これを防ぐには毎年落葉期に枝を刈り込んで、姿を低く維持することが大切で、生垣などは思い切ってきり戻します。

肥料

吸肥力が強いので、生育の具合を見ながら行います。冬期は、堆肥や鶏ふんを根元に埋め、6月上旬と9月上旬には、油カスや化成肥料をばらまいておきます。

病害虫

新芽にアブラムシが発生するほか、ハマキムシが発生し葉を巻きます。いずれも殺虫剤を月1~2回定期的に散布します。また、ダイシストン粒剤などを土の上に撒いておくのも効果的です。



フヨウとムクゲとハイビスカス

アオイ科フヨウ属には、何種類もの植物がありますが、草本類(草の仲間)と木本類(木の仲間)に分けられます。
 草本類には、アメリカフヨウ、モミジバアオイ、トロロアオイなどがあり、木本類には、フヨウ、ムクゲ、ハイビスカス、ハマボウなどがあります。
 フヨウとムクゲとハイビスカスのもっとも大きな違いは、耐寒性の違いで、ハイビスカスは熱帯花木で非耐寒性常緑低木で、温度さえあれば一年中咲き続けます。フヨウは、半耐寒性落葉低木で、関東以西では、庭木として植えられています。関東では冬に地上部が約半分枯れます。寒い地方では盛土して越冬させますが、北海道では冬越しできません。ハマボウは、フヨウと同じく半耐寒性落葉低木で、ムクゲは耐寒性低木です。

シロバナムクゲ
シロバナムクゲ
ピンクデライト
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