緑花ガイド
エリカ
エリカ属の植物は、ツツジ科の常緑または半落葉の低木で、北ヨーロッパから地中海沿岸、さらに北アフリカから東部アフリカを経て南アフリカに至る広い地域に分布しています。とくにケープ地方を中心としたアフリカには種類が多く、花の美しいものが数多くあります。
花色が豊富で濃赤、ピンク、紫、黄、緑、白のものまであり、花形も長いものから短い筒形、球形、先の急に細まった壺形など変化に富んでいます。
日本には大正末期から昭和初年に渡来しましたが、原産地の気候と日本の気候が違うので、ごく一部の品 種しか栽培されていません。
エリカは、分布している地域の違いによって、一般にヨーロッパ原産種と南アフリカ原産種に分けて扱われています。
ヨーロッパ原産種
花は小形で、花色は紫紅、桃あるいは白などが主で、欧米では古くから庭園用植物として主要な地位を占めています。
耐寒性は強く-15℃以下の凍結にも耐えることができますが、夏期冷涼な地で育つため、日本の夏は暑すぎて栽培が困難です。わずかに鉢物として栽培されている程度でほとんど利用されていません。
南アフリカ原産種
花の色、大きさ、形など変化に富んでいて、大多数の種がケープ半島の西北部から広く東部に分布し、とくにケープタウン東方のカレドン地区には最も多く自生しています。
日本では、ジャノメエリカが鉢物や切花用に栽培されているほか、最近では数種が鉢物として出回っています。
耐寒性はやや弱く、多くの種は-8~-5℃くらいまで耐えます。一般に、夏期に雨が非常に少ない場所に自生しているので、日本では雨が多すぎて、根が湿気で衰弱して枯れてしまうことが多く、また、高冷地では多湿の害は避けられても冬が寒すぎて、屋外では育てることはできません。
日本で栽培されているエリカ
ジャノメエリカ(エリカ・カナリキュラータ)
ケープ地方原産の大形種で、高さは2mを超える低木で、枝を密生し、遠目にはスギのように見えます。花色は桃赤色で、雄しべの葯が濃紫黒色で目立つため、クロシベエリカともいわれています。また、この黒っぽい雄しべが輪状に並び、花を上から見ると蛇の目に見えるのでジャノメエリカという和名がつけられています。
現在では濃桃色の選抜種が多く栽培され、東京などでも屋外で越冬するようになっています。冬から春にかけて長い間開花するので、庭木や鉢物として広く栽培されています
エリカ・カルネア
ヨーロッパ南東部のフランス、南ドイツ、オーストリア、スイス、イタリアなどが原産で、枝の先端に総状の花房をつけ、小さな花が群がって咲きます。開花期は、早咲き種で11月末から12月、遅咲き種で2月に開花を始め、それぞれ1ヵ月以上咲き続けます。
とくに土壌を選ばず、耐寒性、耐暑性ともに強く、関東地方の暖地で栽培できます。通気性、保水性、排水性のよい土壌に、ピートモスを十分にすき込んで、骨粉、リン肥などを元肥として入れておき、植え込みは浅植えにします。
花後、当年枝の基部を2cm ほど残して枝を刈り込み、新梢を出させ、株の高さを低くおさえて栽培します。
エリカ・ダーリーエンシス
エリカ・カルネアとエリカ・エリゲナの雑種で、開花期間が長くて花色のよいカルネアと成長の早いエリゲナの性質をそなえていて、樹形はカルネアよりやや立性になります。耐寒性の強さは抜群で、エリカの他の種と比較しても最も強い部類に入ります。土壌を選ばず、どこでも生育し、冬の期間から春にかけて咲き続けます。
剪定は、あまり強くすると樹勢を極度に弱らせるため、カルネアほどの強い剪定は行わず、花房のあとと、当年枝の上部を切るくらいにします。
繁殖
繁殖は、普通さし木によって殖やします。適当な温度があればいつでも可能ですが、日本では9~ 10 月頃、当年枝の新梢の先端を取って挿します。
さし穂は、3~5cm 程度に採取し、穂の下部の葉を取り除き、発根促進剤で処理して挿します。
肥料
エリカは、多肥栽培すると、暖地では耐暑性が弱くなるので、できるだけ肥料を少なくし、徒長しないように育てます。
利用
グランドカバーや庭のボーダー用、鉢物として利用できます。露地では、霜で浮き上がらないようにし、鉢物はすぐに根づまりを起こすので、用土は粗めのものを用い、フェルト状にならないようにし、毎年植え替えをして根の整理をします。