緑花ガイド
デンドロビューム(ノビル系)
ランの中で、もっとも多くの原種があります。小さな花は2mmのものから、大きい花は、10cmほどもあります。東南アジア、オーストラリア、日本、中国と広範囲に分布する着生ランで、生育に適した温度は、種によって10℃以上の差があります。
ノビル系は、ノビルという原種を交配親とした品種で、寒さにも強く、もっとも多く栽培されています。
ノビル系のほかに、高温を好むファレノプシス(デンファレ)系、房咲きのフォーミディブル系などがあり、日本に自生しているセッコクのような小型種もあります。
種類が多いだけに花色や花形などはさまざまで、葉形も三角形の葉が重なったものや、キュウリのような葉形のものまであります。
春から夏にかけてが生育期で、春に出た新芽は、夏までに親バルブと同じくらいまで生長し、秋になると肥大して、充実期にはいります。
ノビル系の特徴は、自生地がインドやミャンマー北部の標高1000m以上の山岳地のため、一定以下の温度に当てないと花芽が出来ません。新しいバルブが完成する11月ころに、十三℃以下の低温に約3週間当てると、花芽が出来ます。多湿のままで低温に合わせると、根が傷みますので、10月下旬からは葉水のみにして、鉢の中が乾いた状態で徐々に寒さに当てます。雨の当たらない軒下などに吊るしておきます。
一定期間低温に当てると花芽が分化し、早いものは12月、遅くても翌年の5月頃には開花します。
置き場所
春から秋は戸外に、冬は室内に置きます。
4月からは、戸外に出し、強い日光に十分に当てると太い丈夫なバルブが出来ます。地面にじかに置くと、ナメクジによって食害される恐れがあるので、高めの棚に置くか木に吊るしておくと安心です。
夏の間は、風通しのよい場所で、出来るだけ長く直射日光に当てます。
9月中は戸外に置き、バルブを充実させます。10月にはいったら、雨の当たらない軒下に移し、乾かし気味に管理します。あまり早い時期に室内に入れてしまうと、高芽が発生するだけで、花芽が出来ません。
水やり
新芽が伸びはじめた株は、2~3日に一回たっぷり与え、5~10月は戸外に置き、自然の雨に当てます。
夏は乾燥が激しいので、毎日夕方たっぷりと与え、それでも乾くようなら、早朝にも水やりします。
秋になってバルブの完成期に入ったら、水分は次第に不要になります。気温が低くなるにつれて、鉢内の乾きも遅くなってくるので、過湿にならないようにします。
肥料
新芽が伸びはじめたら、固形肥料を1個、2ヶ月に1回置き肥すれば十分です。液肥の場合は、ハイポネックス1000倍液を10日に1回ずつ与えます。
7月のはじめにハイポネックス1000倍液を1回だけ与えて、それ以後は花芽をつけるのに障害となる窒素肥料をやめて、リン酸とカリのみ与えます。
秋以降は、肥料は与えません。
植え替え
花が咲き終わった春先が適期です。
株が大きくなって根づまりしてきたり、植え込み材料が古くなってきたら、植え替えが必要です。一般には水ゴケを使用しますが、バーク、ピートモス、ヤシガラを使用することも多くなっています。
根を傷めないように、古い水ゴケを取り除き、同サイズかひとまわり大きな鉢に植えます。鉢が大きすぎると、内部にいつまでも水分が残り、根ぐされの原因になりますので、なるべく小さな鉢に植えます。植え替え後20日間くらいは、葉水をかけて湿度を保ちます。
病害虫
新葉が育っている間に葉の表面に黒斑が出来る黒斑病は、やがて病斑が大きくなり、落葉してしまうので、新葉が育っている間に、殺菌剤を月2回散布し、予防します。
害虫でもっとも多いのはカイガラムシで、被害の広がらないうちに、古ハブラシでかき落とします。
高芽どり
古いバルブの途中から、新芽が伸び、そのままにしておくと、小さなバルブが出来て、根が出てきます。根が3~4cmに伸びたころに切り離して、根を水ゴケで包んで、2号鉢に植え込んでおくと、2年後には立派な株になります。