緑花ガイド
紅葉の美しい樹木
秋は木々の葉が、赤や黄色、黄褐色に色づき、庭に彩りをそえます。紅葉する木といえば、モミジ、カエデに代表され、庭木としてもイロハモミジやオオモミジが多く使われています。
モミジとカエデは違うのかといわれますが、イロハモミジを別名イロハカエデというように、植物学的にはカエデ科の植物ということで、特に区別はしていません。しかし、園芸的には習慣として、葉の裂片の深いイロハモミジやオオモミジをモミジといい、裂片の浅いイタヤカエデやウリハダカエデなどをカエデと呼んでいます。
紅葉の美しい種類といっても、気象や土壌などの環境の違いや、樹木の個体によって紅葉の程度が変わってきます。
葉が黄色になったものを“黄葉”、赤くなったものを“紅葉”と書き、どちらも発音は“こうよう”と同じですが、この二つは色が異なるだけでなく、色の変化の仕組みも違っています。
通常、葉の色は“緑”に見えますが、実際は緑色と黄色が混ざっています。詳しくいうと、緑色の色素クロロフィルと黄色の色素カロチノイド(ニンジンやカボチャの色素とおなじ種類のもの)とが混じって“緑”に見えています。秋の終わりになり、気温が下がってくると、緑色のクロロフィルが分解してなくなり、反対に黄色のカロチノイドは分解されずに残るので、黄色になります。これが“黄葉”です。
“紅葉”のでき方についても、秋の終わりに気温が下がり、クロロフィルが消えることは黄葉の場合と同じです。しかし、紅葉の場合は、赤い色素のアントシアン(リンゴの果皮や赤いバラの花びらとおなじ種類のもの)が葉の中に新たに出来て赤くなります。一般には赤くなるイロハモミジやオオモミジでも、アントシアンができなくて黄色に色づいたものを、よく見かけます。
紅葉は、日光がよく当たり、落葉期に昼暖かく、夜間には冷え込み、寒さがきびしい山地ほど美しくなるものです。中秋から晩秋にかけて気温が徐々に低くなるより、急に下がるほうがより美しい紅葉が見られます。紅葉を楽しむには、庭の中でも昼は日光がよく当たり、夜間には霜を受けるような所に植えると、色づきがよくなります。
庭に植えて紅葉を楽しめる樹木
- ☆ カエデ科
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カエデ科には、多くの種類がありますが、イロハモミジ、オオモミジ、ハウチワカエデ、コミネカエデ、ウリハダカエデ、トウカエデ、メグスリノキなどは、赤く紅葉します。
また、イタヤカエデ、エンコウカエデ、カジカエデなどは黄色く色づきます。
- ☆ カエデ科以外のもの
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カエデ科以外にもよく紅葉するものがあり、マンサク科には台湾原産のフウと北米原産のモミジバフウがあります。葉はカエデによく似ていますが、枝に互生しているのでカエデと区別できます。
このほかに、マンサク科には平地でもよく紅葉するマルバノキがあります。ウルシ科のハゼノキ、ヌルデ、ヤマウルシ、ツタウルシも赤く紅葉します。
山地に生えるニシキギ科のニシキギ、コマユミ、ツリバナなどの低木は果実と紅葉が秋には同時に楽しめます。ニシキギは秋の紅葉が美しいので錦にたとえられ、枝にコルク質の翼が発達する特徴があります。
ツツジ科の中では、ドウダンツツジが紅葉します。春に壺形の白い花が咲き花木としてもよく、庭木や生垣に多く使われています。ミツバツツジは、早春に紅色の花が咲き、三枚ずつ枝についた幅広い葉が秋には紅葉します。 - ☆ その他のもの
- ミズキ科のハナミズキ、トウダイグサ科のナンキンハゼなどは赤く紅葉します。ナナカマドは赤い実と葉がよく目立ちます。このほか、イチョウ、カツラ、ムクロジ、カラマツ、シラカバ、ムクノキ、ダンコウバイ、ユリノキなどの黄葉もよく、メタセコイヤ、ラクウショウ、ケヤキ、コナラ、トチノキなどの渋いレンガ色の紅葉も捨てがたいものです。